投資信託を考えようⅡ
前回、『毎月分配型投信』のことについて話をしました。その最後に、所謂、【分配原資】について話をしましたが、今回、もう少し詳しく話をしてみたいと思います。
【分配原資】とは何か?【分配原資】は通常、その投信が、分配金を支払うための余剰金ととらえられることが多いようです。しかし、余剰金などではなく、投信の運用上、分配金を支払うための計算上の数字でしかないということです。 では、【分配原資】はどのように計算されるのでしょうか。
【分配原資】を調べると、配当金等を支払うための、投資収益とあります。投資収益は、通常、投資信託の場合、投資対象商品(債券・株式・不動産及びREIT等)の配当金(インカムゲイン)と、投資から得られる売買収益(キャピタルゲイン)から構成されるものです。しかし、これらの上に、評価益を加えたものが、日本の分配型投資信託の分配原資と言われるものとなります。
一年間などの期間において、配当金や、売買収益を分配金として支払われる投信が一般的です。値上がり益重視の株式投信などは、無分配型と言って一切分配金を支払わない投信もあります。
ただ、日本では、1990年からの長引く証券不況により、成長型株式投信は敬遠され、債券型やREIT型の毎月分配金が支払われる投信が人気となり、主流となっていきました。そして、一時期、各社がこぞって毎月分配型投信を設定し、販売していきました。そのうち、フィデリティ投信のように、「分配力」などのキャッチコピーで、分配金の高さのみを競って販売されるようになっていきました。そんな状況のもと、カバードコールを付けた”デリバティブタイプ”や、新興国通貨を利用した”通貨選択型”など、内容も難解なものが多く設定・販売されることとなりました。
元来、『グローバル・ソブリンオープン』などは、年金の不足を補うように保有されることも多く、タコ足配当は指摘されながらも、タコ足部分はそれ程大きくはありませんでした。
実際、『グローバル・ソブリンオープン』が設定された当初の分配金は、月35円でその後45円、55円60円と数か月ごとに上がってゆき、約一年後の基準価格は9500円前後で推移しています、その間の、年間分配金と、基準価格の関係で行くと、約7~8%程度で、当時の世界主要国の債券利回りも、年率4~6%程度あり、その上に売買益が加算されるわけですから、それほど、間違った運用設計がされているわけではありません。 また、前回少しお話しました、『好配当グローバルREITプレミアム・ファンド通貨セレクトコース』については、当初分配金は、月200円で、当初基準価格10,000円スタートですので、年間分配金と、基準価格の関係で行くと、約24%となります。ただ、中身は、当時のREITの配当利回りは、約6%前後で、高金利国への通貨予約で、約5~6%、カバード・コールのオプション料収入で約7%、これらを合わせると、約20~21%になり、前出の売買収益を加味すると、不可能なものではありません。
ただ、『毎月分配型投資信託』の人気が高まるにつれ、分配金の多寡を競うようになりました。例えば、『フィデリティUSリートオープンB(為替ヘッジなし)』は2010年に85円90円の分配金を月100円に引き上げ、その後、80円に引き下げ、2015年初頭に再度、100円に引き上げますが、当時の基準価格は6100円前後ですので、年間分配金と基準価格の関係で行くと、約20%程度に上ります。この投信は、単に米国の上場リートに投資するわけですので、当時の米国上場リートの配当利回りが、3~5%程度であることを考えるとほとんどが、タコ足配当となります。(当時は、タコ足批判から、分配金を引き下げる投信が多かった) 『フィデリティUSリートオープンB』についても当初の設計は、月40円分配で、基準価格10000円スタートですので、分配金と基準価格の関係で行くと約4.8%程度で、当時の米国上場リートの配当利回り4.5~5.5%程度であることを考えると、十分達成可能な水準と考えられます。このように考えると、二月に一度の年金の不足分のために、限られた資金を運用しつつ切り崩しながら、補うことは、決して間違った運用方法とは言えないのではないでしょうか。
【分配原資】自身、そのような、高分配金競争の中、分配金を捻出するための計算上の数字と言えます。先ほども話をしましたが、配当金(インカムゲイン)と、売買収益(キャピタルゲイン)だけなら、それほど大きな問題はありません。ただ、評価益が含まれると話は別です。評価益は、所詮、その時点の評価にすぎません。その後、損失が発生することもあります。実際、運用会社の方と話をすると、『毎月分配型投資信託』は、毎月決算がありますので、その時点を基準として、前の期に比し、評価益があればそれも、評価益として【分配原資】に計算できるそうです。
一時は、この【分配原資】を強調するように謳った投信も数多く見られました。(今もネット広告等で、謳っているものも有るようです)そのため、基準価格以上に、分配原資が独り歩きすることもありました。もう一度言いますが、分配原資は基準価格、及び投信の総資産等とは、一切関係ありません。
現在、よく問題になるのが、ファンドの収益以上に分配金を出す、タコ足配当ですが、以前から、金融庁や、日本証券業協会、日本投資信託協会でも、何らかの規制をかけるべきとの方針が話し合われた時期もありました。実際、銀行や証券会社、及び運用会社の担当者などが集められ、検討されていたそうですが、実現には至りませんでした。
分配型投資信託を選択する際は、そのファンドの投資対象と、そのインカムゲイン水準、運用方法等について、自身のリスク許容度、及び自身の必要分配金額に照らし合わせえたうえで、判断するのが得策です。
最後に、新興国通貨についてですが、私個人的な現在の私見をのべるなら、今は慎重に対処したいと考えます。現在、世界的な利下げの中、新興国でも相次いで利下げに踏み切っているところが多くあり、金利的優位をそれほど感じなくなっているといえます。また、通常、リスクオフに際は、新興国通貨から、先進国通貨へシフトされることが多く、今後、世界的景気減速がささやかれる現状では、慎重にならざるを得ないと考えます。(昨年は米ドル日本円の二通貨のみ買われた状況)
次回は、その他投資信託についてお話ししたいと思います。
【分配原資】とは何か?【分配原資】は通常、その投信が、分配金を支払うための余剰金ととらえられることが多いようです。しかし、余剰金などではなく、投信の運用上、分配金を支払うための計算上の数字でしかないということです。 では、【分配原資】はどのように計算されるのでしょうか。
【分配原資】を調べると、配当金等を支払うための、投資収益とあります。投資収益は、通常、投資信託の場合、投資対象商品(債券・株式・不動産及びREIT等)の配当金(インカムゲイン)と、投資から得られる売買収益(キャピタルゲイン)から構成されるものです。しかし、これらの上に、評価益を加えたものが、日本の分配型投資信託の分配原資と言われるものとなります。
一年間などの期間において、配当金や、売買収益を分配金として支払われる投信が一般的です。値上がり益重視の株式投信などは、無分配型と言って一切分配金を支払わない投信もあります。
ただ、日本では、1990年からの長引く証券不況により、成長型株式投信は敬遠され、債券型やREIT型の毎月分配金が支払われる投信が人気となり、主流となっていきました。そして、一時期、各社がこぞって毎月分配型投信を設定し、販売していきました。そのうち、フィデリティ投信のように、「分配力」などのキャッチコピーで、分配金の高さのみを競って販売されるようになっていきました。そんな状況のもと、カバードコールを付けた”デリバティブタイプ”や、新興国通貨を利用した”通貨選択型”など、内容も難解なものが多く設定・販売されることとなりました。
元来、『グローバル・ソブリンオープン』などは、年金の不足を補うように保有されることも多く、タコ足配当は指摘されながらも、タコ足部分はそれ程大きくはありませんでした。
実際、『グローバル・ソブリンオープン』が設定された当初の分配金は、月35円でその後45円、55円60円と数か月ごとに上がってゆき、約一年後の基準価格は9500円前後で推移しています、その間の、年間分配金と、基準価格の関係で行くと、約7~8%程度で、当時の世界主要国の債券利回りも、年率4~6%程度あり、その上に売買益が加算されるわけですから、それほど、間違った運用設計がされているわけではありません。 また、前回少しお話しました、『好配当グローバルREITプレミアム・ファンド通貨セレクトコース』については、当初分配金は、月200円で、当初基準価格10,000円スタートですので、年間分配金と、基準価格の関係で行くと、約24%となります。ただ、中身は、当時のREITの配当利回りは、約6%前後で、高金利国への通貨予約で、約5~6%、カバード・コールのオプション料収入で約7%、これらを合わせると、約20~21%になり、前出の売買収益を加味すると、不可能なものではありません。
ただ、『毎月分配型投資信託』の人気が高まるにつれ、分配金の多寡を競うようになりました。例えば、『フィデリティUSリートオープンB(為替ヘッジなし)』は2010年に85円90円の分配金を月100円に引き上げ、その後、80円に引き下げ、2015年初頭に再度、100円に引き上げますが、当時の基準価格は6100円前後ですので、年間分配金と基準価格の関係で行くと、約20%程度に上ります。この投信は、単に米国の上場リートに投資するわけですので、当時の米国上場リートの配当利回りが、3~5%程度であることを考えるとほとんどが、タコ足配当となります。(当時は、タコ足批判から、分配金を引き下げる投信が多かった) 『フィデリティUSリートオープンB』についても当初の設計は、月40円分配で、基準価格10000円スタートですので、分配金と基準価格の関係で行くと約4.8%程度で、当時の米国上場リートの配当利回り4.5~5.5%程度であることを考えると、十分達成可能な水準と考えられます。このように考えると、二月に一度の年金の不足分のために、限られた資金を運用しつつ切り崩しながら、補うことは、決して間違った運用方法とは言えないのではないでしょうか。
【分配原資】自身、そのような、高分配金競争の中、分配金を捻出するための計算上の数字と言えます。先ほども話をしましたが、配当金(インカムゲイン)と、売買収益(キャピタルゲイン)だけなら、それほど大きな問題はありません。ただ、評価益が含まれると話は別です。評価益は、所詮、その時点の評価にすぎません。その後、損失が発生することもあります。実際、運用会社の方と話をすると、『毎月分配型投資信託』は、毎月決算がありますので、その時点を基準として、前の期に比し、評価益があればそれも、評価益として【分配原資】に計算できるそうです。
一時は、この【分配原資】を強調するように謳った投信も数多く見られました。(今もネット広告等で、謳っているものも有るようです)そのため、基準価格以上に、分配原資が独り歩きすることもありました。もう一度言いますが、分配原資は基準価格、及び投信の総資産等とは、一切関係ありません。
現在、よく問題になるのが、ファンドの収益以上に分配金を出す、タコ足配当ですが、以前から、金融庁や、日本証券業協会、日本投資信託協会でも、何らかの規制をかけるべきとの方針が話し合われた時期もありました。実際、銀行や証券会社、及び運用会社の担当者などが集められ、検討されていたそうですが、実現には至りませんでした。
分配型投資信託を選択する際は、そのファンドの投資対象と、そのインカムゲイン水準、運用方法等について、自身のリスク許容度、及び自身の必要分配金額に照らし合わせえたうえで、判断するのが得策です。
最後に、新興国通貨についてですが、私個人的な現在の私見をのべるなら、今は慎重に対処したいと考えます。現在、世界的な利下げの中、新興国でも相次いで利下げに踏み切っているところが多くあり、金利的優位をそれほど感じなくなっているといえます。また、通常、リスクオフに際は、新興国通貨から、先進国通貨へシフトされることが多く、今後、世界的景気減速がささやかれる現状では、慎重にならざるを得ないと考えます。(昨年は米ドル日本円の二通貨のみ買われた状況)
次回は、その他投資信託についてお話ししたいと思います。
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