投資信託を考えよう
前回まで、『債券』について話をしてきましたが、その中で、”百害あって一利なし”という金融商品はない。中味を知って内容を理解して、そのうえで自身の投資目的に照らし合わせた上で投資すれば、後になって、「大きな失敗をした。大損した。どうしよう。」と悩むこともないでしょう。
たとえば、株式の投資経験が全くなく、上場企業の相場動向も興味ない人が、『EB債(他社株転換条項付き債券)』に投資して、ノックインし、株券で償還された場合、どうすればいいのかパニックに陥るでしょう。ただ、株式投資に明るく、常に銘柄研究している方が『EB債』などに投資する場合は、転換条項の付いた対象銘柄をよく研究したうえで、決定するでしょう。その場合は、不幸にして、ノックインした場合でも、冷静に処理されるでしょう。
投資信託も同じです。中味を知って内容を理解したうえで、投資検討することが、何より大事で、一部の評論家や専門家などと云われる人の、情報や意見に惑わされなくていいのです。
今回は、今、巷で絶対に買ってはいけない投信だなどと云われることの多い、『毎月分配型投資信託』についてお話しします。
『毎月分配型投資信託』は、タコ足配当だ、大損するのが必定だ、現に基準価格がすべて大幅に下がってる。などとたたかれ、こんな投信を買った人は馬鹿だ、勧めた金融機関とは取引するな、などとたたかれてばかりです。現に私も、FPの会合へ行ってもそんな話を聞くことがあります。
では、『毎月分配型投信』とは、一体どういうものでしょうか。外国債券やREITなどに投資し、その利金や配当金、及び投資商品の値上がり益などを原資に毎月一定額を分配する投資信託です。日本でよく販売されるようになったのは、「パトナム・インカムファンド」からではなかったかと記憶しています。これは、米国の投信でドル建て投信でした。その後、国内で円建の分配型投信が販売され、人気を博していきました。最も有名で、一時は、5兆円を超える資産規模となった投信が、1997年12月に設定された、『国際グローバル・ソブリンファンド』です。内容を簡単に説明すると、その名の通り、世界のソブリン債(国債・政府機関債)に投資し、その収益を、毎月一定額を分配するというもので、非常に人気を博しました。当時、日本はバブル崩壊以降の大不況で、その年の11月に、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券と相次いで、大手金融機関が破綻し証券離れを起こしていた時期です。その後、ITバブルの崩壊、リーマンショックなどがあり、株式離れが起こり、最盛期は、5兆7千億にまで達しました。 『グローバルソブリン』人気にあやかり、各社、毎月分配型投信をこぞって設定しました。『フィデリティ・USリート・オープン』や、『新光USリート・ファンド』などが、分配金の高さから人気を集めました。ただ、その後分配金の高さを競うが如く、ハイ・イールド債や、株式に投資する『毎月分配型投信』が販売され、元本の一部払い戻しが公然となりました。
私が証券マン時代、フィデリティ投信の販売会社向け担当者から、「フィデリティ投信は、昔から分配金を出さないことが、当社のアイデンティティ。」と聞かされていました。しかし、日本で分配型投信が脚光を浴び始めたころ、相次いで、分配型投信を販売し、【分配力】なんて、意味不明のキャッチコピーで、投資対象の配当金以外の明確な収益機会もない単純な投信にも関わらず、単に分配金の高さだけを強調し煽っていました。
その後、金融庁の指針により、元本の一部払い戻しについて、図をもって説明しなければいけない、また、すでに保有されている人にもその旨を説明しなさいとの指導があり、現在では、投資信託説明書(交付目論見書)にも、はっきり記載されており金融機関も必ず説明しています。ですから、そのことは充分に理解して、どういう収益機会でどれくらいの収益期待が有るのかをよくみるべきです。また、併せて投資対象となる金融商品が何かをよく考えてみましょう。
収益機会も、先ず予測可能なものは、配当金、利金です。売買益、値上がり益は予測できません。そこで、投信各社が考え出したのが、通貨選択型や、オプション取引を利用した「カバード・コール」です。ただ、通貨選択でよく使われる通貨は、高金利国の通貨で新興国通貨を使うものが多いのも事実です。新興国通貨は、その政情不安もあり、変動も大きくなります。また、マーケットがリスク・オフの時は、下落傾向にあると考えられます。このようなことを理解したうえで考えていくと、「カバード・コール」は、投資対象の急激な変動がなければ、一定の収益は期待できるもので、また、高金利通貨への通貨シフトも、新興国の下振れリスクはあるものの、これ自身で一定の収益は期待できます。ですから、過去一年間の分配金を現在の基準価格で割って計算すると、単純でしかも、ある程度リスクの少ない投資対象ほど、率は低く、複雑で収益期待が多様化されているものほど、高くなっています。
ただ、新興国通貨への通貨選択や、カバード・コール戦略も一度や二度ほど説明を受けただけでは、一般には理解しがたいものです。そして、内容についてよく分からぬまま、分配金の高さだけをみて投資すると、投資信託の基準価格が大きく値下がりした際に困惑することになります。
では、『毎月分配型投信』はどのように使えばいいのでしょうか。昔、高齢者の年金の不足分に分配金を利用するということが、よく言われました。実際に、一時期、『国際グローバル・ソブリン』などは、充分にその機能を発揮していたといえます。現に、『国際グローバル・ソブリン』に設定時から投資していると、分配金込みで80%近く上昇しています。同じように、同時期に日本株に投資していると、日経平均で、約40%程度、TOPIXで約33%の上昇です。ちなみに、私が雑言を言った『フィデリティUSリート・オープン』ですが、設定時(2003年12月)から保有していると、分配金込みで倍以上になっています。株式は、当時バブル崩壊以降の安値圏から若干持ち直した水準でしたが、これで約倍程度です。また、カバード・コールや通貨選択型などを用いたもので、『好配当グローバルREITプレミアム・ファンド通貨セレクトコース』は、設定時(2013年1月)から7%程度の上昇に留まっているとはいえプラスとなっています。これは、対象通貨の、ブラジル・レアルやトルコ・リラが半値近くまで下げたからと云えます。
ある程度長い期間でみてみると、特別、悪い投信という概念とは程遠いものです。
『毎月分配型投信』も、分配金を受け取っているので、分配金込みで考えると、長期投資なら、悪い投信とはいえません。一部の専門家を名乗る人たちは、一部タコ足配当になっていることや、一時期の基準価格の急落だけを見て、最悪のファンドのようなことを言っているのでしょう。
限られた収益から、一定額の分配金を受け取るわけですから、元本の一部払い戻し(いわゆるタコ足配当)となることを理解したうえで、その投資対象をよく確認したうえで投資を行えば、一喜一憂することなく保有できると考えます。
最後に、販売会社がよく言う言葉に、「分配原資」があります。これは、詳しくは次回お話ししますが、この言葉にこそ大きな”うそ”が含まれています。これは、ファンドの純資産とはまったく別のもので、これの多寡で良し悪しを判断すると大きな間違いを引き起こしかねませんので充分に注意してください。
たとえば、株式の投資経験が全くなく、上場企業の相場動向も興味ない人が、『EB債(他社株転換条項付き債券)』に投資して、ノックインし、株券で償還された場合、どうすればいいのかパニックに陥るでしょう。ただ、株式投資に明るく、常に銘柄研究している方が『EB債』などに投資する場合は、転換条項の付いた対象銘柄をよく研究したうえで、決定するでしょう。その場合は、不幸にして、ノックインした場合でも、冷静に処理されるでしょう。
投資信託も同じです。中味を知って内容を理解したうえで、投資検討することが、何より大事で、一部の評論家や専門家などと云われる人の、情報や意見に惑わされなくていいのです。
今回は、今、巷で絶対に買ってはいけない投信だなどと云われることの多い、『毎月分配型投資信託』についてお話しします。
『毎月分配型投資信託』は、タコ足配当だ、大損するのが必定だ、現に基準価格がすべて大幅に下がってる。などとたたかれ、こんな投信を買った人は馬鹿だ、勧めた金融機関とは取引するな、などとたたかれてばかりです。現に私も、FPの会合へ行ってもそんな話を聞くことがあります。
では、『毎月分配型投信』とは、一体どういうものでしょうか。外国債券やREITなどに投資し、その利金や配当金、及び投資商品の値上がり益などを原資に毎月一定額を分配する投資信託です。日本でよく販売されるようになったのは、「パトナム・インカムファンド」からではなかったかと記憶しています。これは、米国の投信でドル建て投信でした。その後、国内で円建の分配型投信が販売され、人気を博していきました。最も有名で、一時は、5兆円を超える資産規模となった投信が、1997年12月に設定された、『国際グローバル・ソブリンファンド』です。内容を簡単に説明すると、その名の通り、世界のソブリン債(国債・政府機関債)に投資し、その収益を、毎月一定額を分配するというもので、非常に人気を博しました。当時、日本はバブル崩壊以降の大不況で、その年の11月に、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券と相次いで、大手金融機関が破綻し証券離れを起こしていた時期です。その後、ITバブルの崩壊、リーマンショックなどがあり、株式離れが起こり、最盛期は、5兆7千億にまで達しました。 『グローバルソブリン』人気にあやかり、各社、毎月分配型投信をこぞって設定しました。『フィデリティ・USリート・オープン』や、『新光USリート・ファンド』などが、分配金の高さから人気を集めました。ただ、その後分配金の高さを競うが如く、ハイ・イールド債や、株式に投資する『毎月分配型投信』が販売され、元本の一部払い戻しが公然となりました。
私が証券マン時代、フィデリティ投信の販売会社向け担当者から、「フィデリティ投信は、昔から分配金を出さないことが、当社のアイデンティティ。」と聞かされていました。しかし、日本で分配型投信が脚光を浴び始めたころ、相次いで、分配型投信を販売し、【分配力】なんて、意味不明のキャッチコピーで、投資対象の配当金以外の明確な収益機会もない単純な投信にも関わらず、単に分配金の高さだけを強調し煽っていました。
その後、金融庁の指針により、元本の一部払い戻しについて、図をもって説明しなければいけない、また、すでに保有されている人にもその旨を説明しなさいとの指導があり、現在では、投資信託説明書(交付目論見書)にも、はっきり記載されており金融機関も必ず説明しています。ですから、そのことは充分に理解して、どういう収益機会でどれくらいの収益期待が有るのかをよくみるべきです。また、併せて投資対象となる金融商品が何かをよく考えてみましょう。
収益機会も、先ず予測可能なものは、配当金、利金です。売買益、値上がり益は予測できません。そこで、投信各社が考え出したのが、通貨選択型や、オプション取引を利用した「カバード・コール」です。ただ、通貨選択でよく使われる通貨は、高金利国の通貨で新興国通貨を使うものが多いのも事実です。新興国通貨は、その政情不安もあり、変動も大きくなります。また、マーケットがリスク・オフの時は、下落傾向にあると考えられます。このようなことを理解したうえで考えていくと、「カバード・コール」は、投資対象の急激な変動がなければ、一定の収益は期待できるもので、また、高金利通貨への通貨シフトも、新興国の下振れリスクはあるものの、これ自身で一定の収益は期待できます。ですから、過去一年間の分配金を現在の基準価格で割って計算すると、単純でしかも、ある程度リスクの少ない投資対象ほど、率は低く、複雑で収益期待が多様化されているものほど、高くなっています。
ただ、新興国通貨への通貨選択や、カバード・コール戦略も一度や二度ほど説明を受けただけでは、一般には理解しがたいものです。そして、内容についてよく分からぬまま、分配金の高さだけをみて投資すると、投資信託の基準価格が大きく値下がりした際に困惑することになります。
では、『毎月分配型投信』はどのように使えばいいのでしょうか。昔、高齢者の年金の不足分に分配金を利用するということが、よく言われました。実際に、一時期、『国際グローバル・ソブリン』などは、充分にその機能を発揮していたといえます。現に、『国際グローバル・ソブリン』に設定時から投資していると、分配金込みで80%近く上昇しています。同じように、同時期に日本株に投資していると、日経平均で、約40%程度、TOPIXで約33%の上昇です。ちなみに、私が雑言を言った『フィデリティUSリート・オープン』ですが、設定時(2003年12月)から保有していると、分配金込みで倍以上になっています。株式は、当時バブル崩壊以降の安値圏から若干持ち直した水準でしたが、これで約倍程度です。また、カバード・コールや通貨選択型などを用いたもので、『好配当グローバルREITプレミアム・ファンド通貨セレクトコース』は、設定時(2013年1月)から7%程度の上昇に留まっているとはいえプラスとなっています。これは、対象通貨の、ブラジル・レアルやトルコ・リラが半値近くまで下げたからと云えます。
ある程度長い期間でみてみると、特別、悪い投信という概念とは程遠いものです。
『毎月分配型投信』も、分配金を受け取っているので、分配金込みで考えると、長期投資なら、悪い投信とはいえません。一部の専門家を名乗る人たちは、一部タコ足配当になっていることや、一時期の基準価格の急落だけを見て、最悪のファンドのようなことを言っているのでしょう。
限られた収益から、一定額の分配金を受け取るわけですから、元本の一部払い戻し(いわゆるタコ足配当)となることを理解したうえで、その投資対象をよく確認したうえで投資を行えば、一喜一憂することなく保有できると考えます。
最後に、販売会社がよく言う言葉に、「分配原資」があります。これは、詳しくは次回お話ししますが、この言葉にこそ大きな”うそ”が含まれています。これは、ファンドの純資産とはまったく別のもので、これの多寡で良し悪しを判断すると大きな間違いを引き起こしかねませんので充分に注意してください。
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